「ロゴドン」なんておまけだよ!バイヤーが選ぶバレンシアガの本気服5選‼

2018-19AW COLLECTIONより変更されたBALENCIAGAの新ロゴ

出典:https://hypebeast.com/

街を歩けばロゴに当たる。
ことわざを捩った言い回しが出来てしまう程、世の中に浸透しているブランドはそう多くはない。

その中でもやはりここ数年でもっとも飛躍したブランドと言えば“BALENCIAGA(バレンシアガ)”であろう。
SUPREME(シュプリーム)やESSENTIALS(エッセンシャルズ)などのように、定価が割と安価であるのがストリートブランドの魅力の一つでもあるが、このブランドは自身の位置付けをストリートに寄せながらもその形態はラグジュアリーブランドという態をなしている。

場所は都会のみならず、ちょっと離れた地元でも見かけるほどの浸透力。
大きなロゴが背中で語るフーディ(パーカー)やキャプのフロントにあしらわれた複数パターンのロゴキャップ、何重にもなったソールが重厚感を見せる厚底スニーカーなど、そのどれも見たことがない人は今となっては居ないだろう。

そんなブランドBALENCIAGAだが、その進路をストリートに大きく舵取りしてから認知したという人も少なくないはずだ。
現に、巷の若者を中心に着用しているバレンシアガのアイテムで見られるのは主にパーカーなどのスウェットアイテムとプリントTシャツ、頭には少し浅めに被ったキャップ、そして足元は様々なカラーリングのスニーカーである。
これだけ見ればどう考えても高めのストリートブランドであると認知されても否応ない。
確かに、ここ2、3年のファッション業界の中心にあるムーブメントが90年代であり、特にストリートカルチャーがトレンドの最前線にいる以上、各ラグジュアリーブランドがストリートシーンに寄せたアイテムを発表するのは至極当然の結果ではある。

しかし、ことバレンシアガというブランドに関してはその認識がややストリートに特化しすぎているように筆者は感じる。
だからこそ、筆者は提示しなければならない!
見誤るな!BALENCIAGAというブランドの本質はそこにはない!「ロゴドン」なんておまけだよ!…と。

1 復活の“BALENCIAGA”ストリートの異端児が捧げた創設者への敬意(オマージュ)!

偉そうに言ってくれちゃって!と思っている諸君。
先に断っておくが、筆者は決して現在のバレンシアガの形やストリートカルチャーひいてはストリートファッションをディスっているわけではない。

数年フランスでファッション界に携わり多くのファッションの歴史とブランドを見聞きし、現在もバイヤーとして日々いくつものブランドを見ているからこそ、このブランドをハイストリートブランドという位置付けで終わらせて欲しくないだけだ。
考えても見て欲しい。
街を歩けばロゴに当たると筆者が冒頭で言ったように、大きなロゴ(いわゆる「ロゴドン」)のパーカーやロゴキャップなどは特筆してオシャレな人間でなくともコーディネートに取り入れている。
つまりは、分かりやすくて取り入れやすい、言うならば外れないけどダサくはならない安牌アイテムなのだ。

せっかく高いお金を支払ってブランド服を購入するのに、そんなファストファッションさながらの買い物でいいのだろうか。
そんなわけはない!
バレンシアガ=ロゴ系のハイストリートブランドという認識で「バレンシアガってかっこいいよな!」とか「デムナのデザインマジ神!」と思っているならまずは騙されたと思って読んで欲しい。
そうすれば、バレンシアガがファッション界において中心にいる所以が理解できる。
そしてそれが分かれば、選ぶアイテムも変わってくる。

1-1 天才達が嫉妬する才能!全てのデザイナーの師と呼ばれた男

ブランドの本質を知る上で欠かせないのはブランドの創業者の存在である。
BALENCIAGAの創業者はCristóbal Balenciaga Eizaguirre(クリストバル・バレンシアガ・エイサギーレ)と言うスペイン出身のバスク系スペイン人で、1919年にスペインのサン・セバスティアンにオートクチュール(Haute-Couture)のブティックを構えたことから始まる。
フランスのブランドという認識が根強いので、この時点でえ?スペイン?と疑問に思う読者も多いだろう。
確かに現在バレンシアガの本店はパリの名所シャンゼリゼ通りから伸びるジョルジュ・サンク通りに構えており歴代パリコレクションのブランドとして名を馳せているが、始まりはスペインの港町に佇むオーダーメイド専門の高級仕立て服屋だった。

若き日のクリストバル・バレンシアガ

出典:http://www.balenciaga.com/

10 Avenue George V, 75008 Parisにある本店

(右) https://sekaitrip.com

王族御用達の名門ブランドとしてスペインでその名を轟かせていた矢先、30年代に勃発したスペイン内戦を機にフランスに活動の拠点を変え、37年にパリにブティックを構えたことによりフランスブランドという認識が広く知れ渡ったが、この辺りのブランドの歴史などについては別項で記載の

【初心者向け】バレンシアガとは?なぜ人気なのか徹底解説+愛用芸能人

https://b-w-n.media/balenciaga

を熟読して欲しい。
筆者がここで簡単に語るのは、バレンシアガという人物がいかに現在のバレンシアガのあり方にとって重要であるかという一点である。

バレンシアガ本人が活躍していた時代は、世界中で知らぬ人はいない名門ラグジュアリーブランド「CHANEL(シャネル)」や「DIOR(ディオール)」をその名の通り本人たちが手がけていた頃。
フランスではココ・シャネル、クリスチャン・ディオール、ポール・ポワレ、マドレーヌ・ヴィオネ、ユーベルト・ジバンシーなど今でもファッションの基礎と呼ばれる名だたるデザイナーがしのぎを削りあう群雄割拠の時代であった。
特にクチュリエ=オートクチュールを手がける職人は持ち合わせたセンスとその技術が大きく明暗を分ける中、バレンシアガはそれらのスターデザイナーたちからその高い技術と類稀なる仕立ての才能を賞賛され、こう呼ばれていた。

「彼だけが、デザインをして、型紙を作り、縫い上げるという全ての工程を一人で出来る本当のクチュリエだ」-COCO CHANEL

「彼は我々全員の師である」-Christian Dior

40年代半ばにディオールによって提唱され瞬く間に世の中の定番となった「ニュールック」ですらもバレンシアガは10年近く前にその前身を発表しており、常に新しい挑戦でモード界を震撼させていたことは上のデザイナーたちの言葉でもお分かりいただけるだろう。

彼の最も大きな功績、そして現在のバレンシアガの根幹ともなっている命題は「体のラインがはっきりと分かるようなピッタリとした服から、体型を気にせずに服を着られるような、ゆったりとした服を作ったこと」であり、バレンシアガ本人も生前こう述べていたと言う。

「私の服を着るのに完璧も、美しさも必要ない。私の服が着る人を完璧にし、美しくする。」

出典:https://kaitoriagent.com/

1-2 没後45年、蘇るクリストバルの建築!!

このようなバレンシアガの新しい形への挑戦の意思と、体型を気にせずに服を着られると言うブランドの根幹はハイストリートブランドとして認識が変貌した現在のバレンシアガにおいても受け継がれている。

その理由の一つはやはり、ファッション界の台風の目となっている人物「VETEMENTS(ヴェトモン)」のデザイナーDemna Gvasalia(デムナ・ヴァザリア)のクリエイティブディレクター起用であろう。
2016年秋冬のコレクションは、まさにバレンシアガが返り咲くにふさわしいコレクションとなったのは記憶に新しい。

一見すればストリート界の異端児、ヴェトモンのデムナと厳密かつ建築的なアプローチで美を追求したバレンシアガの精神というのは相反する様に感じられた。
しかし、筆者が先に述べた「体系を気にせずに着られる様な服」造りという基本的なコンセプトは両者において見事にマッチングしているのである。

デムナの手がけるクリエーションの多くはオーバーサイズとユニセックス、そしてランウェイすらも素人が歩くという斬新かつリアルな服の見せ方と着こなしの提案である。
時代の変化とともに多少の誤差はあるとしても、その根幹にあるのは「現実的に人が体系を気にしないでも着ることができる服」であり、バレンシアガがクチュールという形にこだわった部分をデムナは既製服の上で見事に表現して見せた。

各シーズンのコレクションを見てもわかるように、デムナはブランドが培ってきたクチュリエの確かな技法を見事ストリートに昇華させ、モード界の建築家と呼ばれたバレンシアガのクリエーションを再現して見せた。
一見すればストリート感の強いコレクションラインナップに見られがちだが、創業者バレンシアガに対しての尊敬(オマージュ)はコレクションアイテムの随所に見て取ることができる。

BALENCIAGA 2016-17AW COLLECTION LOOK1/LOOK23

出典:https://www.vogue.co.jp/

16aw-rtw右側の写真はデムナ初のコレクションのオープニングルック。
バレンシアガのアトリエが得意とするクチュール仕込みのテーラードジャケットは、ウエストの高めの位置をあえて凹ませることで腰回りに入れたパットの膨らみを強調し、30年代にバレンシアガが提案したニュールックの原型となったシルエットを現代風にアレンジした象徴的なルックである。
肩パットを高めに入れることで女性の自立を服作りの根幹に組み込んだバレンシアガの意思と厳密かつ建築的な美を見事に表現しきった。

また、左のルックはPコートと言うアイビーの定番アイテムを2パターン(筆者も所有しているが、肩落としの写真のような着こなし以外に普通にPコートとしても着用できる)で着用できるようになっており、ドレーピング(立体裁断)を得意としていたバレンシアガの技術が遺憾なく発揮されている。
このスウィングと名付けられているシリーズは著名人がデニムジャケットを着用したことで人気を博したが、筆者としてはこういったクラシカルなアイテムにこそ、バレンシアガというブランドで展開される魅力を感じる。

そして、2017年春夏のバレンシアガ史上初(厳密には2013SS〜14SSの1年間、ニコラ・ジェスキエールが実験的に行った)のメンズのパリコレクションランウェイで、デムナのバレンシアガへの敬意は本人へ向けられる。

BALENCIAGA 2017SS MENS COLLECTION LOOK8/LOOK23

出典:https://www.vogue.co.jp

2017年春夏コレクションで多く登場したのが、シュランク・ジャケットと称されるダブルブレストのクラシカルなセットアップスーツ(左写真)や、肩パットが多めに入ったボクシーシルエットのダブルブレストのセットアップスーツ(右写真)など、デムナが普段ヴェトモンで見せるメンズコレクションからは少しかけ離れた印象のラインナップだった。

デムナファンのメンズにとっては少し拍子抜けのように感じられるこのコレクションにこそ、デムナがバレンシアガというブランドを見事に解釈し創業者クリストバル・バレンシアガに対して尊敬を込め継承していくという真髄がうかがえる。

クリストバル・バレンシアガは作り手としても完璧主義者であったとされているが、そのスタンスは本人の服装にも顕著に表れていた。
メディア露出の多いデザイナーではなかったにも関わらず、彼はいつもダブルブレストのスーツを着用し、胸元にチーフを忍ばせた紳士的な装いで仕事をし続けたとされており、このコレクションで多く展開されたそれらのアイテムはデムナがバレンシアガ本人に対して捧げた最大限の尊敬の形であると筆者はこのコレクションを見た時に感じた。

この様に、BALENCIAGAはオートクチュール=オーダーメイドの高級仕立て服から始まり、数々のデザイナーに多大なる影響を与え、モード界の基礎を作り上げた人物の一人であり、そしてその人が作り出した由緒ある老舗ラグジュアリーブランドなのである。

決してここ数年で台頭してきた若手ブランドでもなければ、ハイストリートブランドというわけでもない。歴史があり、その歴史とともに変化し続けてきたからこそ近年のファッション界を席巻するブランドとして認知されているのである。

2 目立っているのがロゴドンってだけですから!本当に着たいBALENCIAGAの本気服

さてBALENCIAGAが単なるハイストリートブランドではない事が分かったところで、バイヤーである筆者が前述までの話を踏まえた上で提案したいバレンシアガのオススメアイテムを5つ紹介しよう。

ストリート色が強い印象が浸透してしまっているせいで、モードな着こなしには合わないブランドだという間違った認識を払拭しきれていない読者も多いはず!
そこで、筆者が選ぶ個人的にこれは!と思うバレンシアガの魅力的なアイテムをここからは提案したい。

Via Heroine

出典:https://blog.gxomens.com

2-1)  2017春夏メンズコレクション“シュランク・ジャケット”

出典:https://www.vogue.co.jp

まずは先にも述べたデムナ・ヴァザリアのクリストバル・バレンシアガに対する尊敬の詰まった1着である。
何と言っても大きく見えがちなダブルブレストのスーツをコンパクトに見せ、スタイリッシュな現代風のシルエットとなっているところがポイントである。
これを可能にしているのが、アイテム名にもある様に「シュランク」という技術。
シュランクとは「織物の仕上げの最終工程で強制的に十分収縮させておく加工」のことを指し、本来は仕立てる前段階で必要かつ面倒な工程なのだが、これと立体裁断の技術を遺憾無く発揮して仕立てられたまさにバレンシアガを体現した様なアイテムである。
シルエットが美しく、体に上品にフィットするフォルムは立体裁断ならでは!クローゼットに1着あればフォーマルなシーンでも大活躍すること間違いなしの即戦力アイテムである。

2-2)2019春夏プレタ・ポルテコレクション“ソフトオーバーサイズセットアップ”

出典:https://www.vogue.co.jp

このアイテムの魅力はブレザーとしても着用できそうななめらかな手触り感のあるクラシカルなオーバーサイズのシャツと、その共布で仕立てられたパンツである。
セットアップとしての着用も可能な上に、シャツにもジャケットにもなるこのアイテムは、デムナ本人が若者世代に向けてバレンシアガ流クラシックを提案した秀逸な一品。
襟元は内側にボタンがついているのでルックの様に羽織としても活用することができ、それでいて肩パットなどはついていないのでシンプルにリラックスしたシルエットを演出している。
程よいドレープ感とオーバーサイジングがトレンド感を持ちながらもクラシックなアイテムなのでモードな着こなしが可能!

2-3)2017プレフォールコレクション“オーバーサイズフラワー総柄シルクシャツ”

ランウェイコレクションではないが、ラグジュアリーブランドならではの総柄シャツも見逃せない!シルクで仕立てられたシャツは程よい光沢感とリュクス感が漂う1着である。
一見するととっつきにくくも感じられるフラワーの総柄プリントだが、程よいゆったり感とシルク特有の上品さが1枚で主役級の役割を果たしてくれるので春先などこれだけ着て街に出ても十分に戦力となる。
また、柄のバランスや仕立てのサイジングなどはさすがクチュールブランドと言わざるを得ないほどの美しさ。
よく見ると、生地そのものに地模様でエンボスの様なヒョウ柄が隠れているところもモードファッション好きにはたまらないポイントだ!

2-4)2016−17秋冬プレタ・ポルテコレクション“スウィングレザーダブルライダースジャケット”

出典:https://www.vogue.co.jp

レディースラインのアイテムじゃないか!との声も聞こえてきそうだが、それは間違った解釈である。

デムナのデザインに精通しているユーザーは多くが認知していることだが、デムナ・ヴァザリアにとって性別の垣根はないに等しい。
バレンシアガに就任して初となるコレクションは店舗での販売がされたと同時に男性客が急激に増加した。
理由はデムナ式のシルエットがユニセックスのそれに近い展開であるからだ。

筆者もローンチされてすぐにバレンシアガの店舗に赴き、コレクションピースを片っ端から試着したが、特にこのスイングライダースは作り込みが素晴らしい!
ベースのライダースをばらすことなく、パターン段階でスイングしても着用でき、かつ普通のダブルライダースとしても着られるように仕立てているのだから驚いた。
まさに再構築ストリートブームの立役者が自身の技術とバレンシアガの立体裁断技術をコミットさせたアイテムである。
一度羽織れば、普遍的なアイテムが一気にモード感漂うアイテムに早変わりである!

2-5)2018春夏プレタ・ポルテコレクション “カットソードッキングシャツ”

出典:https://www.vogue.co.jp

最後にご紹介するのは少し変り種である。
これからのデムナバレンシアガが面白くなりそうだと筆者が個人的に感じたアイテムであるが、今までありそうでなかった発想がここにはあった。
ルックを見れば一見80年代風のテレビプロデューサーがしていた様な、シャツにカーディガンを袖で巻きつけて胸元でそれをくくる、いわゆる「プロデューサー巻き」にも見えなくない。
しかし、これはすでに1枚で仕立てられており2つのアイテムが共存している。
しかも単純についているだけはなく、これがどちらも着用できてしまうのだから脱帽だ!
1着で2度楽しめるという遊び心も兼ね備えつつ、それでいて仕立ては美しいことを忘れていない。
バレンシアガという老舗メゾンがベースにあるからこそ為し得る業物のアイテムである。

まとめ

この様に、バレンシアガは決してハイストリートブランドでもなければ、ロゴを前面に押し出す「ロゴドン」ブランドでもないことがお分かりいただけただろう。
ストリートというトレンドの中において欠かすことの出来ないブランドまでのし上がらせたデムナはもちろん素晴らしいが、そのベースには老舗クチュールメゾンならではの技術と経験、そして新しいことを受け入れる寛容な姿勢があってこその成功であり、返り咲きと言える。

BRINGではそんなBALENCIAGAのアイテムを、ロゴドンの定番アイテムのほか、今筆者が紹介した様なバレンシアガの本質を楽しめるアイテムまで幅広く取り揃えている。
是非一度足を運んでその息吹を感じてもらいたい。

また、ストリートカルチャーに身を置きながらも、見事に老舗の技術力とその根幹を昇華しているデムナ・ヴァザリアによるバレンシアガは、デザイナーがバレンシアガ一本化を宣言したことにより、クチュールラインの復活も実現するという。
創業者クリストバル・バレンシアガが生涯貫き通したオートクチュールの世界にデムナが挑戦するというのはまさにバレンシアガのブランドが継承し続けた新しい事へのチャレンジに他ならない。
筆者は1バイヤーとして、そして消費者としてその日が来るのを楽しみに待っている。